松本人志氏の一連の報道から見るテレビ局の立ち位置
こんにちは。冨田です。
年明け早々から続いているダウンタウン松本人志氏の一連の報道ですが、いよいよ全面対決へのフェーズに入っていきました。松本氏は文春に対して、名誉棄損による5億5000万円の損害賠償金と、記事の訂正掲載を求め、東京地検に提訴しました。松本氏が依頼した弁護士が微妙だという声もあがっていますが、、今後どのような展開を見せるのか目が離せません。
その一方で、テレビ局は松本人志氏が活動を休止するという発表を受けて、レギュラー番組や特番を今後どうするのか、代役に誰を立てるのかなど、早急な対応を迫られています。
なお、報道当初、松本氏はXで「ワイドナショー出まーす」とポストしましたが、フジテレビ上層部よりストップが入り、結局出演は出来ませんでした。
それはなぜか?
それは、テレビ局の収益構造から考えれば至極当然の流れです。
テレビ局の収益源は?
まず、テレビ局というのは、公共の財産である「電波」を使って放送しています。電波の利用には当然利用料を支払っていますが、かなり「格安」だというのをご存知でしょうか。
携帯電話会社も同じく電波を割り当てられていますが、テレビ局が支払っている電波利用料は、携帯電話会社のおよそ一割程度です。その格安で利用している電波を使い、日本全国へ映像を届けているのです。
そしてテレビ局の大きな収入源として、スポンサー企業からの広告収入があります。つまりテレビコマーシャルです。テレビ局はCMで成り立っていると言っても過言ではありません。
テレビ局はスポンサー企業のコマーシャル収入で成り立っているということは、スポンサー企業が嫌がることは避けなくてはなりません。スポンサー企業はほとんどがナショナルブランドです。性加害疑惑のあるタレントを起用することは、自社のブランドを毀損することになります。
つまり、松本人志氏の性加害疑惑のあるうちは、松本氏が出ているCM、および出演しているテレビ番組へのCMは出すことが出来ません。
よって、テレビ局は松本氏を番組へ出演させるわけにはいかないのです。これはテレビ局の収益構造上、仕方がないことです。
スポンサー企業のコンプラ意識
それでは、なぜスポンサー企業はそんなにもイメージの毀損に敏感なのでしょうか。まだ真実は分かっていない「疑惑」だけの状態なのに。
これには、昨年のジャニーズ問題の影響が大きいと思います。
長年にわたりジャニーズ事務所とテレビ局は蜜月状態にあり、切っても切れない関係だったのですが、一転、ジャニー喜多川氏の未成年への性加害がBBCに取り上げられて移行、テレビ局は一斉に手のひらを返しました。
テレビ局は、ジャニーズ事務所のタレントを起用しなくなったのです。タレント本人たちは、むしろ被害者だったりするのに、です。
その理由として、スポンサー企業がジャニーズ事務所のタレントが出演している番組のCMを取り下げ始めたからです。スポンサー企業はグローバルに展開している大手企業が多く、世界的に大犯罪とされる「未成年者への性加害」に対しては、毅然たる態度を示さないといけません。
性加害者の名前が付いたプロダクションが出る番組にCMを出すという事は、間接的に性加害者側にお金を出しているという事になります。
つまり、スポンサー企業としては、自社のブランドイメージを大きく毀損することなります。そして近年は、そのコンプラ意識に対してよりいっそう敏感になってきているのです。
今後のテレビの在り方
ひと昔前のテレビ全盛だった時代には、企業の広告出稿先として「テレビCM」は絶大だったため、テレビ局としては強気な立場で居られました。
ですが、その後YouTubeやNetflixなどの「黒船」動画配信プラットフォームの台頭と、スマートフォンの民主化により、テレビの視聴数は激減していきました。
いまや、企業の広告出稿先として主流なのは「ネット広告」です。 2019年にネットの広告費がテレビの広告費を上回りましたが、その後も差は開いていく一方です。
ユーザーの視聴スタイルも、テレビデバイスからスマートフォンデバイスに移り変わり、オンタイム視聴よりも、観たい時にいつでも観られるオンデマンド視聴へと移り変わってきました。
そんな中、テレビ局として唯一光明を見い出しているのが、「TVer」です。TVerはスマホでもテレビでもアプリがあり、各局のテレビ番組をいつでもインターネットで視聴できます。
そしてテレビと同様に「CM」が挟まります。テレビほど多くはないのですが、スキップは出来ないので視聴者の目にはとまります。この「CM枠」が売れる分、テレビ局は収益的に助かっています。一度地上波で売ったあと、同じコンテンツをそのまま二次利用してまた売れるからです。
また、TVerの視聴者数は年々右肩上がりで増えており、テレビのそれとは真逆です。TVerは今めちゃくちゃ勢いがあります。とりわけ「ドラマ」が人気で、再生数上位のほとんどを占めています。
まとめ
さて話をまとめると、テレビ局というのは、スポンサー企業の広告費で運営できているため、スポンサー企業への「忖度」や「配慮」が必要不可欠です。そして、黒船の台頭などでテレビ一強時代では無くなったため、近年より一層その圧力は強くなっています。
そんな背景から、テレビ局のプロデューサーやタレントたちは、昔のようにテレビで自由に表現することは出来なくなりました。
今回の松本人志氏のように、今までテレビ業界へとてつもなく大きな恩恵をもたらしてきたビッグタレントでも、一つの記事でテレビからは抹殺されてしまうということです。
なお、松本氏の性疑惑については裁判で明らかにすることですので、そのことについてここでは言及しませんし触れるところではありません。
ということで今日は、テレビ局のビジネスモデルと、その立ち位置について解説しました。
それではまた。
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