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安いニッポン

 


こんにちは。人材開発の冨田です。

今日は、最近話題になっている「安いニッポン」という本を紹介します。

なんだかセンセーショナルなタイトルですが、これからその理由を解説していきます。

 


さて、私は20年前に韓国旅行に行った際、物価が安くてすごいお得感があったのを記憶しています。

コンビニでタバコやドリンクやお菓子を買ったのですが、日本の3分の1くらいの値段だったと思います。

それが、今まさに同じことを感じているのが訪日外国人旅行客です。

日本の物価は安い。しかも品質が良い。  

いつの間にか「安いニッポン」になっていたのです。(日本人はあまり意識したことがないと思いますが)

失われた30年とはよく言ったもので、これはデフレの深刻化によるものです。

 


では、この理由について、あらゆる側面から見てみましょう。  

 

物価の安い国ニッポン

ディズニーランドの入場料、ダイソーの価格で世界で最も安い国は日本です。東京ディズニーランドは最近少し値上げしましたが、それでも1万円を切っているのは日本くらいです。

ダイソーは日本では100円均一なのですが、他国では同じ商品が150円〜200円位します。 製品は中国で生産しているので関税は関係ありません。 それなのに、東アジアの中において最も安いのが日本なのです。

回転寿司にしても、100円のお寿司が食べられるのは日本くらいです。

あと、数年前に銀座にツアーバスで乗り付けて家電を爆買いしていく中国人が話題になっていましたが、日本製品の質が良いという理由もありますが、それ以上に、「単純に安い」からです。

日本人もヨーロッパに行きブランド品を爆買いしていた時期もありましたが、今まさにそれを日本でやられているという状況です。

なぜこんなにも海外に比べて物価が安くなってしまったのでしょうか。

逆に言うと、海外では物価が上がり続けているのに、日本だけずっと物価が上がらないのは何故なんでしょうか。  

 

人材の安い国ニッポン

物価が上がらない理由に、所得が上がらないからという理由があります。

日本だけずっと「実質賃金」を割り込んで推移していて、それは30年間変わっていません。(実質賃金とは物価に対しての賃金の割合です)

他国では、物価も上がり、所得も上がっています。

象徴的な例として、「米住宅都市開発省」がサンフランシスコにおいて、年収1400万円の4人家族を「低所得者」に分類した、という報道がありました。

でもこれは、所得とともに物価も上がっているということなので、相対的には暮らしはあまり変わらないと言えます。

日本は給料も安いが物価も安い。安く生活できる環境があるから問題はないのです。

とはいえ、日本だけ物価が上がらないというのは何だか不思議ですね。

給与が安いから物価が上がらないのか、物価が安いから給与が上がらないのか、いわゆる「卵と鶏」問題です。  

 

買われるニッポン

物価も給与も安い日本は、日本国内においては問題ないのですが、対外国となると、割安な日本は買われる対象となります。

その顕著な例が、北海道のニセコです。

雪質が良くて有名な北海道のニセコは海外客の人気を集めていて、冬のシーズンには毎年のように海外客で賑わっています。

そして、ついには遊びに来るだけではなく、海外企業が投資に乗り出しているのです。 ニセコの土地や施設を買い、新しく高級ホテルやコンドミニアムを建てています。

外国人向けの高い宿泊施設を作り、そして飲食店のメニューも軒並み高くなり、今ではラーメンが一杯2000円もします。

地価も爆上がりしていて、もう日本人が買えないくらいにまでなっています。

つまり、ニセコはもはや日本であり、日本ではないのです。

高くて日本人は遊びに行けないし暮らせない。

外国人向けの宿泊施設やレジャー施設を、外国人が作ったという構図です。

 

そして、買われるのは土地だけではなく、「会社」や「技術」にも及んでいます。

例えば、技術力のある中小零細企業(いわゆる町工場)を、中国企業やアジア企業が買っています。

資金不足で廃業になりそうな老舗企業というのは少なくなく、そこに手を差し伸べているのが海外企業というわけです。

そして、アニメ業界にもその波は押し寄せています。 日本では、アニメの制作会社(つまりアニメーター)には、売上の1割程度しか報酬が入ってきません。

その中抜きをしているのが「製作委員会」で、そこが出版社、放送局、広告代理店などから資金を集め、制作会社に制作費を支払っています。

アニメーターの報酬の安さにはこのような構造上の問題があるのです。

一方で、Netflixなどの動画配信サービス提供者は、直接制作会社に発注が出来ます。

そしてアニメーターへの報酬が2倍、3倍となります。

つまりどういうことかと言うと、Netflixなど豊富な資金を持つ海外企業が、優秀なアニメーター(制作会社)を直接抱えることが出来るということです。

ゆえに、Netflixはヒット作を飛ばし続けることが出来るのです。 (なお、Netflixの年間制作費用は1兆5000億円で、NHKの5倍であり、民放キー局をすべて足しても追いつかない額です)

このように、日本で低賃金で働いている人たちにとっては海外企業は助け舟とも言えます。

決して悪いことではないのですが、このままだと日本の優秀な人材の海外流出は止められないでしょう。  

 

安いニッポンの未来

失われた30年のデフレ経済下で、いつの間にか安い国となってしまった日本ですが、これからどうなっていくのでしょうか。

2012年安倍政権発足後、円安誘導やビザの緩和でインバウンドを増やしていきました。

2019年には3188万人まで増え、インバウンド客の旅行消費額は4兆8000億円にもなりました。(ちなみに世界一の観光客を誇るのはフランスで、2019年は9000万人が訪れ年間21兆円を生み出しています)

中国人の家電爆買い消費に代表されるように、もはや日本国内で日本人向けの消費はなかなか期待出来ない中、インバウンドが頼みの綱というわけです。

少子高齢化で、しかも財布の紐が固い日本人の消費だけではGDPの成長は期待できません。

これからは、フランスのように観光立国を目指していくべきではないかと思います。

そして、そのためには訪日外国人向けに高級ホテルを増やしたりカジノを作ったりするべきです。

日本人向けじゃなくて、あくまで外国人向けに。

日本人向けには安い商品、サービスを。 外国人向けには高くて高級な商品、サービスを。

つまり、二重価格にするということです。

ニセコのように日本人が行けないような場所があっても良いのではないでしょうか。(外国人が喜んで消費してくれるのなら)

もちろん、そうなると副次的な作用もあって、今までのように安くて美味しい回転寿司の100円寿司は食べられなくなるかもしれません。

魚を「買い負けて」仕入れられなくなるからです。 外国企業が高く買う、あるいは外国人向けのお寿司に使うため高く仕入れられる。

そして日本人は安い魚しか食べられない。

これは極端な例ですが、つまりはそういうことです。

日本にはそんな未来が待っているのかもしれません。      

 

 

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