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悪徳商法に気をつけよう

 

 

こんにちは。人材開発の冨田です。

今日は、私が社会人1年目に出くわした悪徳商法の手口についてご説明します。
少々長いですがお付き合いください。

 

 

社会人1年目の23歳、当時の私は川崎駅近くの社宅で一人暮らしをしていました。

秋晴れのある休日に、携帯電話に1本の電話がかかってきました。

着信表示は携帯番号だったので、友達かなと思って電話を取りました。

 

 

「もしもし冨田さんのお電話ですか。私○○と言いますが・・・」

 

 

電話口は関西弁の若い女性の声でした。

名前を言われたので間違い電話ではなさそうだ。でも、知らない人だ。何の電話なんだ?

なぜ番号を知っているのかと聞くと、友人から聞いたとかなんとか言っていたが、その時はあまり警戒することなく話を続けてしまった。

 

 

最近関東に出てきたばかりで友達がいなくて寂しいとかなんとか。年齢は僕より一つか二つ上で、そして友達になって欲しいとかなんとか。

僕も同じ境遇だったので、近くに知り合いがいなくて寂しい思いをしていたところです。
正直、下心がなかったかと言われれば、もちろん、ありました。

 

 

そんなこんなで数回の電話と世間話を通して徐々に距離が縮まっていきました。

そしてある日、お誘いの電話が来ました。

 

 

「今度展示会があんねんけど、一緒に行ってくれへんかな?」

 

 

その日はクリスマスで、新宿のとある場所で展示会があるとのこと。何の展示会だったかははっきり覚えていないが、何か絵画的なものだったと記憶しています。

こちらとしてはうっすら下心があるため断ることもなく会う約束をしました。

 

 

そして待ち合わせ当日、新宿駅南口で合流してまずは喫茶店へ向かいました。

電話でしか話した事がなかったので、初めて実物に会った時にはとてもドキドキしました。

今となってはあまり顔は覚えていないが、雰囲気は「ファーストサマーウイカ」みたいな感じだったと思います。関西人だったし。

 

 

そして喫茶店でも相変わらず世間話に花を咲かせます。どちらかというと相手が一方的に話すのでこちらは聞き役に徹していた感じでした。

クリスマスの日に、まるでカップルが楽しそうに会話しているようでした。

ちなみに、その頃にはすでに僕は「ひろピー」というあだ名をつけられていました。(名前が「ひろまさ」だからひろピーです)

 

 

そして1時間くらい経ったころでしょうか。そろそろ行こうかという事になり、二人でその展示会とやらに向かって行きました。

お店から15分くらい歩いたところの、あるビジネスホテルに着きました。

 

 

十数階だったと思いますがエレベーターでそのフロアーまで上がり、案内された先が普通の宿泊用の一室でした。

ドアを開けた瞬間、部屋の中はガンガンにユーロビート(ディスコ時代のアゲアゲ系音楽)がかかっていました。

この時点で明らかに展示会では無いなと気づきましたが、時すでに遅し。

 

 

対面で座れるブースが二つあり、一つのブースにはすでに先約がいました。そしてもう一つのブースへ案内されます。

彼女はいったん奥の部屋に行き、飲み物を出してくれました。

テーブルの上にはファイルがいくつか並べて置いてあり、それを彼女がおもむろに開きながら説明を始めてきました。

 

 

彼女は完全にそちら側の人だったわけです。

 

 

それで、何を説明してきたかと言いますと、「ダイヤモンドの石」でした。

ネックレスにも指輪にも加工できる、ダイヤモンドの「石」そのものです。

あっけにとられて話を聞いていると、どうやらそのダイヤの石を僕に売りたいらしい。

意気揚々とプレゼンをしてきました。

 

 

将来結婚する時がきたら、その奥さんになる彼女にずっと暖めてきた「ダイヤの石」をプレゼントするのだと。指輪にするでも良し、ネックレスにするでも良し。

その長年温めてきたダイヤを贈ることでとても喜ばれるはずだと。
そんなプレゼントをもらった彼女はとても幸せに感じるだろうと。

 

 

「はぁ…」

 

 

僕は完全にテンションが下がっていました。

そして彼女は立て続けにダイヤの石の値段を伝えてきました。

一括だと80万円だけど、分割払いだと月々2万円くらいだから月に数回の飲み会を我慢すれば買える金額だと言う。

いやいや、一言も買うと言っていないのに支払い方法まで提案するなよ。心の中でツッコんでいました。

ここぞとばかりに畳み掛けてくる彼女に対して、僕はどうしたかと言うと、

 

 

結果からいうと「買いませんでした」

 

 

さすがに23歳の若者には、80万円のダイヤモンドは不要以外の何者でもありません。

「そんなプレゼントがあればたしかに素敵かもね」とは言いましたが、「でも俺は買わないよ」と、ハッキリと買わない意思も伝えました。

 

 

彼女はいろいろと粘ってきましたが、僕は断固としてお断りしました。

諦めた彼女はファイルを閉じ、エレベーターへと案内してくれ、そのままエレベーターに乗り下まで送ってくれることになりました。

 

 

そのエレベーターの中で彼女はボソッと言いました。

 

 

「ひろピーさー、営業マンだか知らんけど、私のことバカにしてたやろ?」

 

 

彼女は突如として豹変しました。

買わなかったことに腹を立てたのか、すごい突っかかってきました。

 

 

エレベーターを下りてホテルの外に出ました。

クリスマスの日は風が冷たくほんのりと小雪が散らついていました。
新宿だけに人の数は多く、みんな忙しなく足早に歩いている、そんな通りでした。

 

 

外に出てからも彼女はかなり怒っていて、僕にめちゃくちゃ突っかかってきました。

買う気もないのに話を合わしてきて、こっちは気分が悪いと。買う気もないのについてくるなとか。
もう、むちゃくちゃ言ってきました。

それには僕の方もキレて、強めの声で言い返しました。

「いやいや、一緒に見るだけとか言ってたからついてきてやったんじゃないか」
「女の色気を利用して連れてきただけじゃないか」「ダイヤなんて聞いていたら最初から来なかった」

はた目には、二人はまるでクリスマスの日に別れ話になったカップルそのものでした。

 

 

新宿の人通りの多い中、一通りバトルしたあと、

「もうええわ」

彼女はそう言い、二人は別々の方向に歩いて行きました。

 

 

そして駅に向かう途中に僕の携帯が鳴りました。
会社の先輩からでした。夕飯を一緒にしないかというお誘いでした。

僕は先輩の家で、先輩の彼女と三人で食事しながら今日あった出来事の一部始終を話しました。

二人は爆笑し、その日から僕のあだ名は「ひろピー」となりました。

 

 

僕はこの一件を「ひろピー事件」として思い出ポケットにしまってあります。

めでたしめでたし。

 

 

 

 

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