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「SDGs」「脱炭素」の不都合な真実

 

こんにちは。人材開発の冨田です。

先日までイギリスで「COP26」という気候変動会議が行われていましたね。いま世界中で叫ばれている「SDGs」ですが、とりわけ環境面においてはさまざまな「不都合な真実」が存在します。

特に「脱炭素」「EVシフト」「ESG投資」「再エネ」というキーワードには密接なつながりがあり、各国の思惑も交錯しています。

それでは、今日はちょっと小難しいテーマではありますが、旬な話題でもありますし、一緒に勉強していきましょう!

 

脱炭素

まず、世界中の「脱炭素」の流れですが、その理由は「地球温暖化」にあります。地球上の温度が上昇していて、そのせいで各国の様々な自然災害が巨大化しています。日本で言えば台風や豪雨、アメリカで言えば(自然発火の)山火事。近年の自然災害の規模は大きくなるばかりです。あと、日本沈没の可能性もありますからね(笑)

そのため、先進国が集まって「このままじゃ地球ヤバいよね」って言い始め、「よし、将来の地球のために環境の目標を決めよう」となり、気温上昇の大きな要因である「CO2の排出量」を減らそうという事になりました。これが「パリ協定」です。

具体的な数値としては、産業革命前(18世紀)からの上昇温度を1.5度以下に抑えること。

そして、そのためには「カーボンニュートラル」を目指そうと。先進国があと30年、途上国は40年かけてそこを目指そうと。(カーボンニュートラルとは、CO2の排出量と吸収量を同じ量にすることです)

 

EVシフト

その流れを受けて、自動車メーカーからは次々と「EVシフト宣言」がされ始めています。
本来自動車は、エンジンで燃料を燃やしCO2を排出していますが、これをCO2排出量「ゼロ」の電気自動車(EV)にするということです。

ただ、そこには世界中の自動車メーカーの思惑があります。

欧米の自動車メーカーは、日本の内燃機関(エンジン)の性能には勝てない。だから、このEVシフトを機にゲームチェンジを狙っているのです。

もう一つの要因としては、テスラの躍進です。自動車メーカーは相当な危機感を持っています。

しかしながら、フォルクスワーゲンもゼネラルモーターズもメルセデスも「脱ガソリン宣言」をしたものの、実のところそれは「コミット」ではなく「目標」に過ぎません。
あくまで「マーケットがそうなるならば」というエクスキューズを残しています。
事実、EVシフトに一番積極的なワーゲンも、新車販売の中でEV車はまだ5%程に過ぎません。

そもそも、世界中の自動車すべてを電気自動車にするというのは、現実的に考えて無理があります。
もしそうなると、すべての車に大量のバッテリーを搭載する必要がありますが、とてもじゃないですがバッテリーの供給が追いつきません。

そして、需要に対して供給が追いつかないということは、価格も上がるということです。

そもそも電気自動車コストの4割がバッテリーなので、バッテリーコストがイコール車両価格になってしまいます。つまり、低所得者層は買えない価格帯となってしまいます。

そして、そのバッテリーの原材料(ニッケル、リチウム、コバルト)は、仕入れ値が安い中国頼みになっています。

なぜ中国が安く製造出来るのかというと、電力が安い上に、新疆ウイグル自治区などで奴隷のように低賃金で働かせて、且つ、生産における環境コストも負担しないで製造しているからです。

環境のためにEVシフトするのに、人権や環境に優しくない地区で生産されたものを使用するという状態が、果たしてSDGs的にどうなのでしょうか?

 

ESG投資

しかし、なぜこんなにもEVシフトが推し進められているのでしょうか。

それは、世の中の投資家がこぞって「ESG投資」に乗り出しているからです。(ESGとは環境、社会、ガバナンスの略称)

いまや、ESGに配慮しない企業は投資対象とされずに、マーケットからは厳しい判断を下されています。

つまり、ハイテクや再生エネルギー、電気自動車などの企業に投資が集中する一方で、石油、石炭、ガソリン車に関係する企業にはお金が集まりません。

このESG投資を背景に、自動車メーカーがこぞって「脱ガソリン宣言」をしているわけです。

でも正直なところ、「脱炭素」には莫大なコストがかかるし、非効率的な生産活動にならざるを得ません。

それでも、今はそちらの方へお金が集まっています。資本主義の考え方からは少しズレてしまっている状態と言えます。

投資の神様、ウォーレンバフェット氏が、「脱炭素には莫大なカネがかかり、それは政府の仕事だ。企業は株主利益を追求する存在」という指摘をしているのも頷けます。

 

再生可能エネルギー

「脱炭素」とは、つまり石炭、石油、天然ガスなどのエネルギーを排除して、太陽光、風力、水力などの自然エネルギーを活用していこうという事です。

では、CO2を排出しない原子力発電はどうするの?

結局はこのような議論に行き着きます。

なぜなら、自然エネルギー(再エネ)だけで電力をカバーすることは無理ゲーだからです。

2020年8月にカリフォルニアで起きた停電が、それを物語っています。

カリフォルニアは温暖化対策に熱心な州で、太陽光発電、風力発電の導入を大きく進めています。そして、火力発電を止めていた真夏の夜、大規模停電が起きました。
日没により、太陽光発電量がほぼ無くなったにもかかわらず、熱波により冷房が集中し、電力需要が落ちなかったためです。
本来は、再エネ設備のバックアップのために火力発電設備を維持しておくべきなのに、それを止めていたからです。

その他、原発ゼロを掲げて再エネ導入に力を入れているドイツにおいても、実はバックアップのためにフランスの原発電力に頼っているという事実があります。

さらに、大きな問題として電力コストがあげられます。

再エネは発電効率が悪いため、どうしても発電コストが高くなります。それはすなわち電気料金の高騰につながります。一般家庭は何とかやりくり出来るかもしれませんが、工場など製造業に与えるインパクトは計り知れません。
生産コストがバカ上がりしてしまうため、結局電気料金の安い国へ工場を移すことになります。

ちなみに、日本のエネルギー割合は、火力発電75%、再エネ22%、原子力3%です。原発36基のうち稼働しているのは10基のみです。

現在、電気代の25%は再エネ賦課金コストです。再エネを増やすということは、国民の負担する電気代が増えていくということです。

 

まとめ

このように、世界的な「脱炭素」の流れには不都合な真実がたくさんあります。「環境にやさしい」というと聞こえは良いですが、そこには莫大なコストがかかるし、且つ、思いっきり非効率なのです。

資本主義社会において、この「環境問題」とどう付き合っていくべきか。

正直、超ムズカシイ課題だと思います。

とはいえ、いまは環境に配慮した企業でないとお金が集まらない。そういう資本主義社会になっているのも事実です。

そりゃ、地球全体が再生可能エネルギーだけで生きていけるのならば、それはもちろん理想的な世界です。でも、それはお花畑理論でありユートピアの世界です。

 


なお、日本は国益だけを考えるのなら、トヨタのハイブリッド車など、排ガスを極限まで抑えた技術をもっともっと世界にアピールして、政府も国連に働きかけて、お花畑論から現実論の話をしていくべきじゃないかと思います。

中国なんかは、まだ成長段階だから排出量はまだ増えると言い、火力発電設備も増設していく計画です。

日本のCO2排出量は世界の3%に過ぎません。中国はこれから2025年までに排出量を10%増やす計画で、日本の排出量はこの増やす分と同等の量です。

そもそも、世界のCO2排出量の大部分を占める中国とアメリカが大きく舵を切らない限り、この問題は解決しません。


「CO2を減らすために」→「電気自動車を作る」→「電気がたくさん必要になる」→「森林伐採し太陽光パネルを大量に設置する」→「CO2を吸収してくれる緑が無くなる」→「CO2が減らない」

こんなコントみたいな状況にならなければ良いですが…

 

さて長くなりましたが、今日は、いま世界で叫ばれている「SDGs」「脱炭素」の不都合な真実についてお話させていただきました。

今日の参考文献はこちらです。
それではまた。

 

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