日本は自国の力だけで国民を守れるのか
こんにちは。冨田です。
さて、前回は中国による台湾有事の可能性について解説しましたが、今回は、その有事の際に日本はどうなるのか。台湾有事で日本がとばっちりを受けた場合、日米同盟により、アメリカは日本を守ってくれるのか、あるいは、自国の力だけで国民を守れるものなのか。そのあたりについて解説します。
日米同盟は強固な関係
戦後の日本は、アメリカ以外に同盟を組む選択肢はありませんでした。つまり、米軍を中心とする連合国軍最高司令部(GHQ)に占領された日本は、アメリカ一国に占領されたも同然でした。
ちなみに、戦後すぐに北方領土を占領したソ連は、もっと領土が欲しいと要求していましたが、アメリカはそれを拒否しました。
アメリカは日本と同じ資本主義国でもあるし、GHQは日本の非軍事化と民主化、そして経済復興を推進し、迅速に政策を打ち出していきました。
そして、1950年から始まった朝鮮戦争により、在日米軍がすべて韓国へ派兵された為、自国を守る目的で自衛隊の元となる「警察予備隊」が作られました。
さらに翌年、サンフランシスコ講和条約にて日本は独立を回復し、同時にアメリカと「日米安全保障条約」も調印されました。
ソ連など共産主義国の脅威に対して、今までずっとアメリカの「核の傘」に守られてきたのは、強固な日米同盟があったからこそです。
アメリカにとって日本は最重要
日本にとってアメリカは、国の安全保障のために欠かせない存在ですが、アメリカにとって日本はどれくらい大事なのでしょうか。
アメリカにとっての日本の位置付けを企業に例えると、アメリカ本土を東京本社だとすれば、日本は大阪本社です。その他の同盟国は、支店や営業所にすぎません。実はそれくらい最重要なのです。
それはなぜか。
それは、地政学的にも日本は重要なポジションにあるからです。もしアメリカが引いた場合には、西太平洋とインド洋は中国やロシアに支配されてしまいます。
中国、ロシア、北朝鮮と共産主義国が固まっているこの地域に対抗するには、日本の位置が「死活的に重要」なのです。とくに沖縄は、弾道ミサイルが届く位置としては、世界をほぼほぼカバー出来るくらいの好立地にあります。
もし日米同盟を解消したら、アメリカは世界のリーダーの座から滑り落ちるくらいのインパクトがあります。
世界最高レベルのASW能力
それでは、日本は一方的にアメリカに守られているだけかというと、そんなことはありません。もちろん、軍事力でいうと自衛隊は自国を守るだけの実力しかありませんが、部分的に見ると世界最高レベルの能力を備えているのです。
それは、海上自衛隊のASW(対潜水艦戦)能力です。ASWとは、簡単に言うと「海の中の戦い」であり、他国の艦艇や潜水艦の脅威に対して、常に監視し、攻撃力を備えておく能力です。
海上自衛隊はこれが世界トップレベルにあるということです。たとえば、中国海軍の艦艇が、東シナ海や南シナ海から、日米に気づかれずに日本海・太平洋・インド洋へ出ることは、絶対に出来ません。こんなにもASWが強力な海域は、他に世界のどこにもありません。
また、海上自衛隊のASWは、アメリカの核戦略を支えているという一面もあります。
アメリカ太平洋艦隊の弾道ミサイル原潜(要は核ミサイル発射用の潜水艦)8隻は、シアトルから北東太平洋にかけての海中を回っていて、これを外国が攻撃する手段は「攻撃型原潜」だけです。
そこで日本の海上自衛隊は、ロシアや中国の原潜を常に監視していて、探知や追尾のためのデータを米海軍に提供しているのです。つまり、米国弾道ミサイル原潜の生存性に大きく貢献しているわけです。
日本の核武装はあり得ない
ところで、もし仮に日本が日米同盟を解消して「武装中立」をした場合、一体どれくらいのコストがかかるのでしょうか。
現在の日米同盟の維持コストは、ざっくり1兆7700億円で、防衛費全体で考えても年間5兆円です。仮にすべてを自主防衛にすると、年間22〜23兆円がかかります。
なにしろ、日本周辺各地の兵力は陸軍だけでも、台湾9万人、韓国46万人、北朝鮮110万人、中国97万人、極東ロシア8万人といった人数がいます。自衛隊の22万人ではまるで足りません。
費用面だけみても、日米同盟がいかにコスパが良いかが分かります。
また、日本も核武装をすればよいのではないかという意見もありますが、現実的にそれはあり得ません。なぜかというと、かつて日本の軍事力を制限し、日本の軍事的な自力を否定してきたアメリカが、日本の核武装を許すはずがありません。
日本が核武装を目指すには、アメリカとの同盟を解消することになりますので、武装中立国家の道を歩むしかなくなります。
それがいかに無謀なことか、お分かりだと思います。
それではまた。
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