価値を上げて価格を上げる(その②)
こんにちは。冨田です。
さて、前回に続き、価値を上げて価格を上げる方法について解説していきたいと思います。
比較対象を変える
価値を上げれば価格も上げられますが、値付けの際に一つポイントがあります。それは「比較対象を変える」ということです。
たとえば、インスタントラーメンの価格を決める際には、他社のインスタントラーメンと比較するのではなく、リアル店舗のラーメンと比較させるようにします。
つまり、リアルな店舗の味を表現できれば、たとえ700円で売っても「ラーメン店に行くより安い」となります。
スーパーで売っているお菓子も、高級感のあるパッケージで包み、POPに「デパ地下レベルのおいしさ」などと書けば、お客さんは「デパ地下のスイーツ」として認識してくれて、商品を安く感じてもらえます。
健康食品やサプリメントであれば、比較対象を「スポーツジム」にしてもよいでしょう。健康になる目的であればどちらも同じですから、ジムの会員費より少し安いくらいの値決めができます。
これらの例は、もちろん品質に自信があってのことですが、逆に言うと、自信を持っている商品であれば、同業他社と比較するのではなく、もっと上位のジャンルと比較して価値を上げれば良いのです。
「返報性の法則」を活かす
中には、価格を上げられないものもあります。国によって報酬が決められている医療費や、定価販売が義務付けられている新聞や雑誌、書籍などです。その場合には「返報性の法則」を利用しましょう。
「価格」は「価値」に従うものなので、価値を上げていけば価格も上がるのが自然です。しかし、価値が上がっているにもかかわらず価格が上がらない場合、ここに「差分」ができます。
すると、人の行動原理として、その差分を埋めて「等価」にしたいと考えます。これが「返報性の法則」です。
具体的に何をするかというと、まずは定期的に通うようになりリピート購入してくれます。そして、何か別の提案を受ければ喜んで受け入れてくれます。
お客様は心理的に等価になるよう行動してくれます。つまり、価格が変えられない境遇でも、粛々と価値を上げ提供し続けることで、顧客のライフタイムバリュー(生涯価値)を上げることができるのです。
BtoBで価格を上げるために
それでは、シビアな「法人顧客」に対して値上げを受け入れてもらうためにはどうすれば良いでしょうか。ここでもポイントは「価格は価値に従う」です。
しかし、一個人に価値を説明するよりも、より丁寧に伝える必要があります。ビジュアルにこだわったパンフレットや、分析や数値も入った専門的な資料など、ツールには力を入れる必要があります。
法人の場合には「買う」に至る意思決定者が何人もいるため、より説得力のある説明が求められます。
もう一つ大事なポイントが、「関係性」が「価値」を作るということです。たとえば、毎月の請求書に手書きのメッセージを添えるとか、相手の感情に訴えるようなことです。相手も人間だから、感情を動かすことも必要です。
常に「GIVE」の精神を持ち接することで、相手のマインドシェアを獲得していきます。
マスタービジネスで価格から解放される
商売人は自分の商売の分野において、お客さんよりずっと詳しいはずです。お客さんは、自分の知るべきことを知らずに苦労していたり、もっと楽しい世界があるのを知らないまま生活しています。
だとすれば、商売人はそれを解決すべく、顧客に有益な価値を提供する「師匠」であるべきです。
「マスター=師匠」ビジネスとは、お客さんがまだ知らない価値を教えることによって、お客さんから対価を得ることです。それは同時に、「お客さんを育てる」ことでもあります。
こちらが価値あるものを売ろうとする時、お客さんがその価値を十分に理解できるだけのリテラシーを持っていることで、その価値がより伝わるようになるからです。
お客さんを価値のわかる顧客に育てていくこと。そして違いがわかる人になればなるほど、品質の高いものには、ちゃんとそれだけの対価を払うという意識になります。
最後に
日本のように成熟した国では、生活していく上で必要なものはすべて揃っていて、東南アジア諸国のように、もっと便利な物が欲しいとか、もっと良いサービスを受けたいとか、物欲や成長欲が薄れてきています。なので、これと言って欲しい物が無いのが日本の現状です。
だとすれば、欲しくなる物を提案していかなくてはなりません。いまだ知らない「価値」を、消費者に教えてあげなくてはいけません。
それが生活に役立たないものであっても、それがどんなに無駄な物でも、「自分にとって価値があるもの」であれば、価格はそんなに気にしないで購入するでしょう。
そもそも、日本人はお金を貯め込みすぎなのです。裏を返せば、欲しいと思うものが少な過ぎるのだと思います。
成熟した世界においては、「無駄な物=豊かさ」なのです。どうしても欲しくなる「無駄なもの」を提案しましょう。知らないなら教えてあげましょう!
それではまた。
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